文章の書き方について、日本語マニュアルになるような、まとまった内容の本を書きたい。明治書院の全5巻『よくわかる文章表現の技術』シリーズを書いてからその構想をずっと温めてきました。
その構想が実現したのは、ダイヤモンド社の編集者である今野良介さんとの出会いでした。出会いは、実は今野さんが早稲田大学第一文学部の学生だった20年近く前に遡ります。『よくわかる文章表現の技術』シリーズを教科書にした授業の受講生だったかつての教え子と二人三脚で作りあげた528ページの文章大全が本書です。

ダイヤモンド社 2023.9

品詞のゴミ箱と称される副詞。日本語の数ある品詞のなかでも、とくに扱いの難しい品詞です。ふだんは意識しないのですが、自分の言語生活を振り返ってみると、「ちょっと」「やっぱり」「めっちゃ」「けっこう」「本当に」など、話し言葉を中心に毎日お世話になっていることに気づくはずです。
文の実質的な内容は、名詞と動詞によって構成されますが、副詞は文に添えて、文に込められた話し手の「心構え」を示すため、聞き手の心に響きます。このため、副詞の力は強力で、話し手の背後にある人間性や、話し手が隠していたかったはずの本音まで、聞き手に自然に伝えてしまう力を備えています。タイトルを『コミュ力は「副詞」で決まる』としたゆえんです。

光文社新書 2023.4

【編著者】石黒圭
【執筆者】井伊菜穂子・市江愛・井上雄太・本多由美子

私の書くものは、文章をある程度書ける方がさらにレベルを上げることを目的とした表現重視のものが多いのですが、本書は、文章を書くのがほんとうに苦手な人のために、できるだけ身近な文章例を使いながら、文章の書き方の基本をわかりやすく伝えた情報伝達・感情伝達重視の本です。
メール、ブログ、報告書、作文、レポートなど、多様なジャンルを意識した基本を5名の筆者で話し合いながらまとめたものです。どうぞご活用ください。

日本実業出版社 2023.2

文系研究者になるには大学院に進学しなければなりません。大学院に進学すること自体も狭き門ですが、博士号を無事取得して望むポストに就くことはその何倍も狭き門です。そのため、大学院に入学後、「もっときちんと調べてから大学院に進学すべきだった」と後悔する人が後を絶ちません。
本書は、大学院に進学してからどのようなステージが待ち構えているのか、そのいくつものステージをどのように乗り越えて文系研究者になっていくのか、就職後もどうすれば幸せな研究者生活を継続できるのかを多角的に論じた本です。

研究社 2021.10

【編著者】石黒圭
【執筆者】青木優子・安部達雄・新城直樹・井伊菜穂子・市江愛・井上雄太・岩崎拓也・王慧雋・赫楊・柏野和佳子・金井勇人・高恩淑・佐野彩子・鈴木英子・田中啓行・董芸・本多由美子

文章を書いているときは、書くことに夢中になりますし、それでよいと思います。しかし文章は他者に読んでもらうために書くものです。そこで、自分の文章を書いたあと、推敲という過程をとおして自分で表現の修正をしなければなりません。本書は、そうした文章のセルフチェックに役立つ本です。
本書は、多数の日本語研究の専門家が文字・語彙を皮切りに、文法・文体、文章構成やレトリックに至るまで、それぞれの専門知識を生かして執筆しています。実際に悩みがちな例をbefore⇒afterで平易に示していますので、ぜひご自身の推敲の一助となさってください。

東京堂出版 2021.10

【編著者】石黒圭・熊野健志
【執筆者】青木優子・浅井達哉・井伊菜穂子・井上雄太・岩崎拓也・佐野彩子・鈴木英子・田中啓行・布施悠子・アンドレイ・ベケシュ・蒙韞・柳瀬隆史・横野光

クラウドソーシングのデータベースをもとに、国立国語研究所と富士通研究所の共同研究プロジェクトのなかから生まれたビジネス文書の書き方指南書です。実際に書かれた10万件の発注文書の特徴を分析した徹底した実例主義と、Q&Aの一問一答形式でビジネス文書のポイントをわかりやすく示した平易な記述が特徴です。

ひつじ書房 2021.3

会社で働くオフィスワークではない働き方が、コロナ禍のなかで急速に普及し、定着しました。リモートワーク、テレワーク、在宅ワークなどと呼ばれる働き方が、今や、ICTが苦手な人にも当たり前のものになっています。
本書は、リアルな空間における対面コミューニケーションだけでなく、バーチャルな空間におけるWebコミューニケーションでも、「画面の向こうに、私たちと同じように、生きて働く人がいる」ことを心に深く留め、出席者が積極的に参加したくなる会議のあり方、受信者がもらって嬉しいメールの書き方などを、ともに考える本です。

小学館 2020.7

【編著者】石黒圭
【執筆者】青木優子・井伊菜穂子・岩崎拓也・赫楊・田中啓行

文章は「書く」ものではなく「見せる」ものである!
――日本語学の第一線の研究者たちが、これからの文章の書き方を大胆提案。「魅せる」「映える」「惹きつける」文章の秘訣を公開します。レイアウトにも徹底的にこだわり、まさに「見せる」本に仕上げた本書。メール、報告書、企画書、プレゼン資料など、ビジネスのあらゆる場面で役に立つ一冊です。

ぱる出版 2020.3

【編著者】石黒圭・烏日哲
【執筆者】井伊菜穂子・鎌田美千子・胡芸(艺)群・胡方方・田佳月・黄均鈞・布施悠子・村岡貴子
日本語学習者は、日本語による論文の書き方をどのように学んでいくのか。
本書は、協働学習のひとつであるピア・レスポンスの授業に焦点をあて、その習得過程を明らかにしたものです。
授業中のディスカッション、授業前後のインタビューなど、学習者の多くの声を拾い上げ、それらを中心に詳細な分析を加えることで、ピア・レスポンス授業の実際を描き出します。

ココ出版 2020.2

【編著者】石黒圭
【執筆者】青木優子、浅井達哉、アンドレイ・ベケシュ、市江愛、井上雄太、岩崎拓也、岩田一成、赫楊、喬曉筠、熊野健志、佐野彩子、布施悠子、蒙韞
生きたビジネス文書をネット上からコーパスとして取り出せる時代が到来しました。
クラウドソーシングをデータベースとし、日本語の国立国語研究所とAIの富士通研究所のコラボで、ビジネス日本語の諸問題と改善法を実証的に明らかにした、新境地を開拓する論文集です。

ひつじ書房 2020.2

段落は、文章構成の基本となる単位であり、国語教育でも大事にされてきましたが、その割には、段落とは何かということを正面から議論した本は少ない印象があります。そこで、本書を執筆しました。
段落は、まとまった内容を入れておく箱のようなもので、箱に入れると、長く複雑な文章の構造を整理するのに役立ちます。また、箱という発想は、読むとき、書くときはもちろん、聞くとき、話すときにも役に立ちます。

光文社新書 2020.2

【編著者】石黒圭
【執筆者】井伊菜穂子・烏日哲・赫楊・Nguyen Thi Thanh Thuy・田中啓行・Dang Thai Quynh Chi・張秀娟・布施悠子・宮内拓也・蒙韞・劉金鳳
「家の奥」ってどこ?
「若干名」って何人?
「小枝を拾って食べる」?
「観光地のソフト」と「ソフトの朝練」の「ソフト」は同じ?
「名前を控える」と「お酒を控える」は?
 日本語学習者の頭のなかで起きている意味の理解という不思議な現象を、母語による分析からあぶり出し、その語彙推測能力や文脈把握能力に迫る画期的論文集!

ひつじ書房 2020.1

【編著者】石黒圭
【執筆者】今村和宏・烏日哲・王麗莉・木谷直之・熊田道子・胡方方・佐藤智照・朱桂栄・鈴木美加・砂川有里子・大工原勇人・野田尚史・藤原未雪・ポクロフスカ オーリガ・蒙韞・簗島史恵・楊秀娥・Dang Thai Quynh Chi・Nguyen Thi Thanh Thuy

日々の授業に役立つ、日本語教師のための「実践」シリーズ第三弾。
学習者にとって日本語の読解はどのようなことが難しいのか、その「つまずき」を解消するポイントや教室活動を丁寧に解説します。
文章理解のみならず、「読む力」と「考える力」を同時に育成する、優れた授業実践を紹介。誤読、文法の読解指導から反転授業、ピア・リーディングまで、読解授業の難しさを解決するバリエーション豊かなヒントが満載です!
「読み」の可能性を広げる授業を目指す教師のみなさまに。

くろしお出版 2019.11

【著者】石黒圭、柏野和佳子
学習の根源、「語彙力」を育てれば、勉強が好きになる!
小学校からはじめたい語彙力を伸ばす方法をくわしく説明!
いろいろな言葉をしれば、想像力も広がり、表現できる世界も広がります。
その上、教科書も理解して読めるようになり、勉強でつまずかないようになります。
では、どのように語彙力を獲得するのがよいのでしょうか?
この本では具体的に、楽しい問題とくわしい解説を通して示します。
一生役立つ語彙力を、小学生から育て始めましょう!

KADOKAWA 2018.10

【編著者】石黒圭
【執筆者】胡方方、志賀玲子、田中啓行、布施悠子、楊秀娥

多くの教育現場で実施されているピア・リーディング。しかし、実際にやってみるとなかなかうまくいかないことも多くあります。
そこで本書では、編著者が行った実際の授業を、テキストや課題の選定等の準備段階から、実際の話し合いの様子や教師の介入の仕方まで多角的に分析し、どのような点がうまくいったのか、或いはいかなかったのかを明らかにしました。
ピア・リーディングの長所だけでなく短所も明らかにすることで、よりよい授業を組み立てる指針を示します。

ココ出版 2018.6

私はこれまで3つの面から言語教育に携わってきました。1つ目は、外国人に対する日本語教育。2つ目は、日本に住む子どもたちにたいする国語教育。3つ目は、日本に住む大人にたいする言語教育です。
その中で気付かされた「豊かな日本語」の数々。その豊かさを味わい、核にある考え方と教え方を考えていきます。

ココ出版 2018.6

「メールで同じ言葉が続く」
「仕事のやり取りで言いたいことが伝わらない」
「謝罪文で相手を怒らせてしまう」
 など大人の日本語の悩みは、「言い換え力」で解決!メール・日常会話からビジネス文書まで、すぐ使える実践的なアイデアを多数紹介するとともに、一生モノの「言い換え」の技術・発想を身につける10の実践的方法を伝授します。

NHK出版新書 2017.12

【【編著者】庵功雄、石黒圭、丸山岳彦
【執筆者】砂川有里子・俵山雄司・野田尚史・ポリー ザトラウスキー・前田直子・山室和也・渡辺文生
林四郎氏の主著『基本文型の研究』(1960年)、『文の姿勢の研究』(1973年)を中心に、「林言語学」の現代的意義を読み解く一冊。
言語活動全体を視野に入れ、文・文章の構造を時間の流れの中に位置づけようとする林氏の言語観は、現代の日本語文法研究や文章・談話研究、国語教育、日本語教育に大きな示唆を与えるものです。

ひつじ書房 2017.12

【監修】山内博之
【編著者】石黒圭
【執筆者】庵功雄、岩崎拓也、金井勇人、黄明侠、新城直樹、末繁美和、俵山雄司、張志剛、永谷直子、宮澤太聡、宮部真由美、劉洋

 「読み手に優しい文章」とはどのような文章でしょうか?
 本書では「読み手に優しい文章」の条件を3つ設定しています。
 1つ目は、正確で自然な日本語。
 2つ目は、流れがスムーズな日本語。
 そして最後に3つ目が、説得力のある発想です。
本書ではこの3つの条件を満たす「読み手に優しい文章」を、作文コーパスを生かした日本語学的な分析で明らかにし、それをシラバスとして提示します。

くろしお出版 2017.12

文章に説得力を持たせたい。
そう感じている人は多いのではないでしょうか。
そうした思いに答えてくれるのがレトリックと呼ばれる文章の修辞技法です。
レトリックの本質は、表現に一手間を加えることです。
直感的に出てしまう形容詞にひと手間を加え、どのように力のある表現に変えていくか。それを本書では、具体的かつ豊富な例で説明していきます。
形容詞を避けることで生まれる新たな表現世界に、ご一緒に足を踏み入れてみませんか?

日本実業出版社 2017.11

前著『文章は接続詞で決まる』光文社新書は、文章を書くときに欠かせない要素である接続詞について総合的に紹介した、いわば理論書です。さいわい、多くの読者に好意的に迎えられた一方、接続詞を使えるようになるための実践書がほしいという読者の声が寄せられました。

 本書は、そうした読者の切実な声に応えるべく、問いに答える形で接続詞の実践力をつけていくことを目指した本です。

実務教育出版 2016.7

まとまった文章を書くときも、人前でプレゼンテーションするときも、「語彙が足りない!」と感じる人は少なくないでしょう。

本書では、
[語彙力]=[語彙の量]×[語彙の質]
と考えます。
とくに大切なのは[語彙の質]です。本書では、[語彙の量]を増やし、[語彙の質]を高める方法を[語彙力]の要として詳しく紹介しています。

光文社新書 2016.5

【編著者】五味政信・石黒圭
【執筆者】有田佳代子・尾崎由美子・迫田久美子・渋谷実希・志村ゆかり・筒井千絵・戸田淑子・古川敦子
日々理想の教室作りに試行錯誤している日本語教師のために、学習者主体の「心ときめく」授業を目指した新しい日本語教授法の提案します。
日本語教師が抱える様々なオキテを創造的に壊し、学習者の力を最大限に引き出す秘訣や楽しく笑える活動のアイデアが満載です。

くろしお出版 2016.5

学校で、会社で、サークルで、相手とどんなふうに話してよいか、困るときがあります。そんなときのために、その場にふさわしい「ものの言い方」を集めた本が売れているようです。事実、そうした本は、いろいろな表現が載っていて、重宝します。
いるのは、どのような基準で「ものの言い方」を選ぶのかという判断基準です。
本書は、話し言葉のコミュニケーションにおいて、相手を不快にさせない判断基準を、豊富な用例とともにお示しする本です。

サンクチュアリ出版 2015.3

【編著者】石黒圭
【執筆者】有田佳代子・安部達雄・烏日哲・金井勇人・武一美・志賀玲子・渋谷実希・志村ゆかり・筒井千絵・二宮理佳
日本語教師のための「実践」シリーズ第二弾。
経験豊かで多彩な執筆陣が、作文指導の基本と実践に分けて、そのノウハウ、ユニークな授業実践を公開、共有します。
新米教師にはもちろん、作文授業のマンネリ化に悩むベテラン教師にも。

くろしお出版 2014.10

日本語の文章を書く人はまじめでルールが好きです。「表記の統一を守って」「1文は短く」「丁寧形と普通形は交ぜないで」文章を書こうとします。
もちろん、文章のルールを守ることは基本的には大切です。しかし、ルールを後生大事に守ることだけが読者の心に言葉を届ける方法でしょうか。
本書は、基本となるルールの重要性と、ルール違反の可能性を同時に模索するちょっと欲張りな文章読本です。

河出書房新社 2014.4

「日本社会のなかに日本語がある」ことはよく知られていますが、「日本語のなかに日本社会がある」ことはあまり知られていません。
本書は、社会言語学という学問のおもしろさを知っていただくために、方言、男女差、世代差、敬語、話し言葉と書き言葉の違いなどについて、多岐にわたる日本語の用例を駆使して、「日本語のなかの社会」をあぶりだす本です。

光文社新書 2013.5

①わかりやすさ:ビジネスは時間との闘いなので、ビジネス文書は短時間で、さっと読めるものでなければならない。
②読み手への配慮:ビジネスは良好な人間関係が必須なので、ビジネス文書は読み手を不快にしてはならない。
③目的の明確さ:ビジネスは用件を伴うものなので、ビジネス文書は何のための文書かが明確でなければならない。
本書は、豊富な練習問題を通して、この三つの条件から文書作成を鍛えます。

日本経済新聞出版社 2012.12

論文で一番大切なのは、ウソがないことです。ウソを完全になくすことは難しいのですが、ウソを少しでも減らし、厳密な文章を書くにはどうしたらよいかについて、論文の構成と論文の表現に分けて解説した本です。
論文の構成では、問う・調べる・選ぶ・確かめる・裏づける・まとめる、の6段階に整理して論じ、論文の表現では、正確さと明晰さをわかりやすく示しました。

日本実業出版社 2012.2

私は、博士論文では文章理解における予測の研究をしました。しかし、研究の世界はマニアックすぎて、そのままでは、ふつうの人はなかなか近寄れません。
そこで、博士論文の研究成果を下敷きにしつつ、一般の読者にも文章理解の予測のおもしろさを知ってもらう目的で執筆したのが本書です。本書を読めば、「たしかに予測しながら文章を読んでいた!」「予測が読書のおもしろみを倍増させていた!」ということに気づくはずです。

ちくまプリマー新書 2010.7

文章を理解するというのは、いったいどのような営みでしょうか。
目に入った文字を語彙や文法の知識を使って丁寧に意味を取っていく側面(精読)と、話題から内容の見当をつけてざっと意味を取っていく側面(速読)があるはずです。さらに、勉強あるいは仕事として文章を読むだけでなく、楽しみながら文章を読むこと(味読)もあるでしょう。
文章を読むという営みを、語学的に考えることで、これまで知らなかった「読む」技術の広がりを体感していただく本です。

大学の先生がビジネスの本を?と思われるかもしれませんが、よく考えると、職場には同僚がおり、出版社をはじめとするさまざまな取引先があり、学生というお客さまがいるという点で、大学の先生もふつうのサービス業です。
ただ、それでも偏る面はあり、一般の感覚と乖離してしまうおそれがあります。本書の執筆にあたっては、さまざまな生のビジネス文書を集めて分析しました。本書はとくにビジネス文書のスピード感にこだわった本であり、実例を多く集めたぶん、実用性の高い本であると思います。

光文社 2010.2

おかげさまで12刷を迎えた、私の著作のなかでもっとも受け入れられた本です。とくに、翻訳家やIT関係者に興味を持って受け入れられたことが嬉しかったです。
もちろん、接続詞の善し悪しだけで文章が決まるわけではありませんが、接続詞が文章の流れを決めるうえで重要な役割を果たしていることは確かです。
文と文を接続詞がつなぐ」という発想から抜けだし、「接続詞によって決まる文章の流れを文と文がつなぐ」という発想が手に入れば、それだけで文章技術向上の階段を一段上ったことになるでしょう。

光文社新書 2008.9

430ページという分量からも、8,400円という定価からも、まず専門家しか手に取れない本でしょう。10年以上かけて格闘した博士論文を刊行したものです。
日本語の文章理解における文連続の予測のメカニズムについて、内省に基づく質的アプローチとコーパスに基づく量的アプローチの両面から分析・考察した点に独創性があります。また、文章構成を視野に入れた予測も意欲的に論じた点も、類書にはない目新しさだろうと思います。

ひつじ書房 2008.3

近代小説や翻訳作品、LOHASな雑誌や論文・レポートなど、ジャンルごとの言 語的特徴や、文末のパターンや、繰り返しによるリズムなど、いわゆる文体にかかわる多様な内容を扱った文章表現の技術書です。
本書の刊行によって、日本語学の研究内容を文章作成の実践に生かすという、全5巻シリーズが完結しました。

明治書院 2007.10

レトリックを扱った本巻は、全5巻のなかでもっとも文学的な色彩の濃い巻です。
比喩を使って豊かなイメージを与える、オノマトペを使って語感に訴える、視点をコントロールして読者にその場にいる臨場感を味わわせる、事実の描写をとおして喜怒哀楽を暗に伝達する、読者に行間を読ませる仕掛けをするなど、かなり高度な内容を盛りこんだレトリックの入門書です。

明治書院 2006.9

日本人なら、ならわなくても文法は間違えないので、文法を学ぶ必要はないはず。じつは、そんなことはないのです。
「えっ、過去形は過去に使うんじゃなかったの?」「えっ、論文・レポートで受け身を使ってよかったの?」「えっ、否定表現ってかならずネガティブな意味になるんじゃないんだ?」「えっ、丁寧体と普通体を交ぜるのはあり?」「えっ、敬語は丁寧にするためのものじゃないの?」など、常識が次から次へと覆され、目からウロコが快感になる第3巻です。

明治書院 2005.10

細部にこだわった第1巻とは異なり、第2巻は文章全体という大局を視野に入れた巻です。
文章の書き出し、結末に始まり、タイトルのつけ方、目に浮かぶような描写の方法、相手が知らないことを手際よく伝える説明の方法、疑問文を使った読み手の惹きつけ方から、伏線の張り方まで、実践的な内容を詰めこんだ第2巻です。

明治書院、2004.9[旧版] 2009.11[新版]

私は学部生のとき、留学生の作文の添削をしていました。そのとき、読点の打ち方をどう直したらよいのか悩み、それを卒業論文のテーマにしたのが、私の研究人生の始まりでした。
第1巻はその読点から始まり、語順の文法、漢字と仮名の書き分けへと続きます。そして、省略や話し言葉・書き言葉の違い、文末表現や接続詞、文や段落の長さと論理へと話が広がります。細部にこそ表現の本性が宿るということをとりわけ強く意識しているのが、この第1巻の特徴です。

明治書院、2004.9[旧版] 2009.11[新版